世界にはさまざまな名前の文化がありますが、アイスランドでは一風変わった命名ルールが存在します。それはなんと、「姓(名字)」が存在しないということ。
日本や多くの国で当たり前に使われている姓が、なぜアイスランドでは使われないのでしょうか?その理由と背景には、古代北欧から続く伝統が関係しています。
この記事では、アイスランドの名前事情についてわかりやすく解説していきます。
この雑学を要約すると
- アイスランドには「家族で共通する姓」が存在せず、「父(または母)の名前+son/dóttir」が使われる
- 名簿や電話帳はファーストネーム順で管理され、社会全体が個人名を重視する文化
- 名前の登録には厳格なルールがあり、文化と言語を守る仕組みが整っている
アイスランドの名前の仕組み:姓の代わりに「父親の名前+son/dóttir」
アイスランドでは、家族ごとに共通の姓を持つことはほとんどありません。代わりに、ラストネームは「父親の名前+son(息子)/dóttir(娘)」という形式で構成されています。
たとえば、父親の名前が「Jón(ヨウン)」なら、その子供が男の子であれば「Jónsson(ヨウンソン)」、女の子なら「Jónsdóttir(ヨウンスドッティル)」となります。
つまり、男の子にRóbert(ロバート)と名付けたらRóbert Jónsson、女の子にHarpa(ハルパ)と名付けたらHarpa Jónssonとなるのです。


えっ!?じゃあ家族でも名字が違うということ?



そうなのよ。お父さんと子どもで苗字が違うのが普通なの。結婚しても名字は変えないわ。



えー、全然ピンとこないけど面白い!じゃあ、名簿とかどうなってるの?



アイスランドでは名字じゃなくてファーストネームのアルファベット順で名簿を作るの。だから、先生も生徒もお互いを下の名前で呼び合うのよ。
なぜ姓がない?その歴史と文化的背景
アイスランドのこの命名法は、古代ノルマン人の伝統に由来します。姓を使う習慣は中世以降にヨーロッパで広まりましたが、アイスランドではあえて古い伝統を守り続けたのです。
また、姓による家柄の強調や階級意識を避けるため、アイスランドではこの父称・母称制を大切にしています。個人を重視する文化が、名前にも表れていると言えるでしょう。
登録にもルールあり!アイスランド人命名委員会とは?
実はアイスランドには、名前を登録する際に審査する「人名委員会」が存在します。登録できる名前は、アイスランド語の文法や発音に合っていることが条件です。
たとえば、「クリスティーナ」など外国的な響きの名前は、アイスランド語風に変えた「Kristín」などで登録しなければならない場合もあります。
これは、言語と文化の保護を目的としたユニークな制度です。
アイスランドならではの豆知識
電話帳はファーストネーム順!
アイスランドの電話帳では、名字ではなくファーストネームのアルファベット順で掲載されています。
アイスランドの大統領も下の名前で呼ばれる
フォーマルな場でも、役職+ファーストネームが一般的。たとえば「大統領グズニ」など。
母親の名前を使うこともできる
伝統的には父親の名前を使いますが、希望すれば母親の名前を用いた「母称」も選べます。
まとめ
・アイスランドには「家族で共通する姓」が存在せず、「父(または母)の名前+son/dóttir」が使われる
・名簿や電話帳はファーストネーム順で管理され、社会全体が個人名を重視する文化
・名前の登録には厳格なルールがあり、文化と言語を守る仕組みが整っている
アイスランドの名前文化を知ると、「名前」のあり方がどれだけ社会や価値観と密接に結びついているかを実感します。
姓が当たり前と思っていた私たちにとって、アイスランドの制度はまさに目からウロコの存在。旅先で人と話すときにも、こうした背景を知っていると、より深く交流を楽しめるかもしれませんね。