「レースは最短ルートを走ったほうが有利」——そう思っていませんか?
しかし実際のF1やMotoGP、スーパーGTなどのレースを見てみると、最短距離を走るだけでは勝てないという現実があります。
では、なぜ最短ルートを走っているのに抜かれてしまうのか?
今回はその疑問を、車やバイクレースの戦略・物理的な視点から解き明かしていきます!
この雑学を要約すると
- 最短ルートよりも「最速ライン」がレースでは重要。特にコーナリングで差がつく
- 戦略的にラインをずらす「ブロック」や「スリップストリーム」も使うことで有利になる
- タイヤの状態や風の影響も考慮し、最短ではない道がベストになることも多い
コーナーでは「最短」より「最速」が正解
コーナーで内側を走る「最短ルート」は距離的には有利に見えます。しかし、コーナーではタイヤのグリップや車体の挙動、アクセルワークが重要になります。
最短距離よりも「速度を落とさず曲がるライン」の方がトータルで速いのです。
アウト・イン・アウトという走行ライン
最速ラインの代表がこれ。コーナーの外側(アウト)から入り、 apex(頂点=イン)を通って、再び外側に膨らむように曲がるラインです。

内側をずっと走ってるほうが早くないの?距離は短いよね?



でも、曲がりやすさとスピードは別問題なの。外側から大きく回れば、スピードを落とさずに済むから結果的に早くなるのよ。



なるほど…じゃあ、スピードが落ちる内側ラインはむしろ不利なんだ!



その通り!レースでは“速さ”が重要なの。“短さ”ではなくてね。
ブロックラインとレース戦略の妙
レース中は、あえて最短ルートを譲って相手を誘い出し、次のコーナーで抜き返すといった戦略もあります。
また、防御のために相手の進路をふさぐ「ブロックライン」を取ることも。
ブロックラインを取ると、自分のラインが理想の走行ラインではなくなるため、自らのペースが落ちるリスクもありますが、「抜かれない」ことを優先する戦術です。
タイヤの温度と摩耗がライン取りに影響する
レースではタイヤのコンディションも重要です。
内側のラインばかり通っていると、路面のゴミ(マーブル)やグリップの悪い部分を踏んでしまい、タイヤの温度が下がったり、スリップして遅れることがあります。
豆知識:マーブルとは?
タイヤのかすが路面にたまったもので、グリップが非常に悪く、そこを踏むと滑りやすくなります。F1やMotoGPではこれを避けるのが基本。
バイクレースはさらにシビア


バイクレースの場合はバンク角(傾き)と体重移動が重要なので、ライン取りは車より繊細です。
直線的に最短距離を通るとバイクが寝かしきれず、十分なスピードでコーナーを曲がれなくなります。
MotoGPライダーは膝だけでなく、肘まで地面につけながら曲がるのは、最大限のバンクを活かすため。
風の影響=スリップストリームの活用
直線では「最短距離」よりも、前の車両の後ろにつくことで空気抵抗を減らすスリップストリームが有効です。
スリップを使ってスピードを上げ、次のコーナーで一気に抜く。
これもまた「最短ルートよりも速い戦術」といえるでしょう。
まとめ
・最短ルートよりも「最速ライン」がレースでは重要。特にコーナリングで差がつく。
・戦略的にラインをずらす「ブロック」や「スリップストリーム」も使うことで有利になる。
・タイヤの状態や風の影響も考慮し、最短ではない道がベストになることが多い。
カーレースやバイクレースでは、「最短距離=最速」ではありません。
最も速く走り抜けられるラインや戦術を選ぶことが、勝敗を分けるカギなのです。
速さの世界は、数字だけでは測れない奥深さがあります。
次にレースを見るときは、「なぜこのラインを通るのか?」に注目してみると、また違った楽しみ方ができますよ!